題名 :『賞金稼ぎ』

登録日時 :03/10/12 17:15

1969年 東映 監督:小沢茂弘 カラー 90分

あんまり有名じゃないけど、この映画には「これを見逃すな」という重要なポ イントがある。若山富三郎が「座頭市」のモノマネをするシーンがあるのだ。 さすがに実の兄弟だけあって、うまかった。




宝暦二年、オランダ船が江戸にやってきて徳川幕府に最新式の銃を売りつけよ うとして、断られた。オランダ船は帰国すると見せかけて、進路を薩摩に向け て進みだした。さては徳川に怨恨を持つ薩摩に銃を売りつけて、日本を内戦状態にする気か? と幕府内は色めき、さっそく薩摩藩江戸屋敷の家老、伊集院右京(片岡千恵 蔵)が江戸城に呼び出された。伊集院は命に代えても薩摩を蜂起させない、と 鹿児島弁で誓い、すぐに陸路を薩摩に向かった。

将軍家重(鶴田浩二)は密かに懇意の蘭法医の錣市兵衛(若山富三郎)を呼び 出し、伊集院の力添えをするよう頼む。将軍相手にタメ口の市兵衛はこれを承 諾し、装備を整えて伊集院を追った。しかし幕府内では、伊集院を信用しない声が大きい。大老牧野(柳永二郎)は 謀反の証拠を見つけるため、隠密を薩摩に放った。謀反を起こす前に、先手必 勝で叩き潰してしまおう、ということだ。

小田原の山道で、伊集院の一行が覆面の武士たちに襲われた。すかさず現れた 市兵衛が、目にも止まらぬ居合い切りで刺客たちを葬った。斬られた足がブー ツのように立っていたりして、血腥い。刺客の懐には薩摩の過激派、山嶽党の 証があった。強敵だ、と市兵衛は覚悟を決める。 薄汚くてお調子者の浪人、曲垣藤九郎(潮健児)が市兵衛の凄腕を見ていて、 おこぼれにあずかりたいと、後をついてくるようになる。

市兵衛は川止めの大井川で、幕府の放った隠密、陽炎(野川由美子)といっ しょの宿になった。暴れ者の川人足達を軽くあしらった陽炎の体術を見てその 正体に気付いた市兵衛は、陽炎に襲い掛かり、こてんぱんにやっつけた。なぜ そんなことをしたのかは皆目わからないが、なにしろこてんぱんだった。そして協力関係を結び、二人で国境の関所をどうやって越えようか、と作戦を練る。そして市兵衛は作戦通り、関所の役人たち数十人を皆殺しにして、薩摩入りした。いやー若山富三郎らしい作戦だな あ。市兵衛と陽炎は別れて別行動を開始する。

陽炎は、数年前から薩摩内に潜入して情勢を探っていた隠密の与藤次(睦五 郎)を訪ねる。四藤太は女房(春川ますみ:絶対わからない)を娶って一子を もうけ、薬屋として暮らしていた。 しかし、実は薩摩側に寝返っていた。四藤太の通報で、四藤太の息子と遊んで いた陽炎は、踏み込んできた山嶽党(藤岡重慶など)に捕えられた。 子供が「おねえちゃーん」と泣き喚いたが、野川由美子は昔からフケ顔だった ので、「おばちゃーん」がフィットするように思う。 何も知らない女房は四藤太に「あんた、何をしたの?」と詰め寄る。なんで薩 摩弁でないんだろう?でも、ほんとこれ春川ますみ?

一方、市兵衛は盲人を装って山嶽党のアジトを目指していた。ガニ股の歩き 方、白目の剥き方、杖の使い方、全て座頭市風で、声もしゃがれていてそっく り。うまいもんだ。 狼少女のような野性的な山嶽党の娘、茜(真山知子)を騙して案内させ、アジ トに入った市兵衛だが、山嶽党首領の掟山二階堂(天津敏)はおいそれとは信 用してくれず、小屋に閉じ込められてしまった。しかしここで市兵衛は茜を犯 す。なぜだかわからないけど、犯す。どうしてもレイプ・シーンは当時のお約 束なのだ。するとお約束通り、茜はすっかり市兵衛に惚れてしまった。 よくあるパターンだけど、私はこういうのヤだな。女性をバカにしている。

翌朝、茜の手引きでこっそり小屋を抜け出した市兵衛を、待ち伏せしていた二階堂が襲う。 市兵衛は深手を負って桜島の火口に落ちた。 しかしもちろん生きていて、藤九郎に匿われた。藤九郎の正体は伊集院の腹心 だったのだが、闇から現れる凄みのある芝居は潮健児の面目躍如。コメディ・ リリーフからの豹変が素晴らしく鮮やかだった。「悪魔くん」のメフィストや 「仮面ライダー」の地獄大使の役で「怪奇俳優」として記憶されることが多い 人だけど、かなりの実力派なのだ。

市兵衛と藤九郎が山嶽党のアジトに戻ると、陽炎が拷問を受けていた。天井か ら吊って股間を松明であぶるという、よくわからん拷問だが、陽炎は舌を噛ん で自害した。しかしこれは市兵衛が与えた仮死状態になる薬を使った擬死で、 市兵衛達が助け出して手当てをした。

翌日、お城の会議では伊集院が頑なに謀反を押しとめていた。大目付でもあっ た二階堂ら重役達を相手に回し、伊集院は一歩も引かない。島津公(高橋昌 也)は結論を先延ばしにした。その夜、市兵衛から将軍の真意を聞いた伊集院は、将軍も自分と同様、日本の 内戦をなんとしても避けたいと考えていることを知り、意を強くする。 そのとき緊急登城するよう使いがやってきた。これは案の定、伊集院を亡き者にしようという二階堂らの仕掛けた罠だった。 伊集院に代わって駕籠に乗り込んでいた市兵衛は、山嶽党の襲撃を迎撃した が、敵の中に連発ピストルを使うオランダ人がいて、これが手強い。藤九郎が 死を賭して弾除けになってくれ、茜も助けてくれたので、どうにか市兵衛は逃 げ延びた。 ちなみに刺客の中に汐路章がいて、モヒカン・ヘアで中国服を着て奇声を上げ ながら襲ってくるのだが、あっけなく倒されていた。でも目立ってはいた。

しかし翌朝、大砲の音が三発、鹿児島の町に響いた。これはオランダと商談を 合意した合図。城にかけつけた伊集院を前に、島津公はどうしても先祖代々の 恨みを晴らすべく謀反を起こしたいので、協力してくれ、と土下座して頼ん だ。伊集院はこれを承諾し、自らオランダ船上での交渉役を引き受けた。伊集院は裏切ってしまったのか。 オランダとの交渉に向かう伊集院の行列に、囚われの身で参加した市兵衛は関 節を外して縄を抜け、猛烈に暴れだす。サポート役の茜は死んでしまったが、 市兵衛はピストル使いのオランダ人を斬り、二階堂を斬り、その他多勢も全部 斬り殺して、最後は伊集院だけとなった。

しかし伊集院は示現流無双の腕前。剣を抜いて対峙するだけで、市兵衛はこれは勝てない、と悟った。実際に剣を交えてみたら、やはり強かった。合わせた 剣に体重をかけて押してくる伊集院の前に、市兵衛は圧倒的に劣勢。若山富三 郎がチャンバラで力負けするところは初めて見たが、相手が千恵蔵なら納得。

しかし伊集院の腹から血が溢れ出す。すでに陰腹を切っていたのだ。伊集院は 藩や君主を騙して、オランダ船を鉄砲もろとも爆破するつもりだった。

伊集院に代わって、大量の火薬をオランダ船に持ち込んだ市兵衛は、船を爆破 し、海の藻屑に変えてしまった。(完)




ま、このぐらいなら活劇ドラマ、冒険ドラマとして、私は満足だな。 いったいどこが「賞金稼ぎ」なんだとか、蘭法医のくせになぜオランダ語がわ からないんだとか、陽炎が何の活躍もしないとか、テメエが殺しまくったくせ に「多くの血が流れた」と嘆くなよとか、問題点は少なくないんだけど、とり あえず演出面でスペクタクル感とロマニズムはうまく表現できていると思う し、アクションそのものも充実していた。若山の殺陣は絶好調。

薩摩山嶽党って敵役なんだけど、悪役には描かれていない。天津敏とか藤岡重 慶とかが、それなりにストイックないい奴に見える。この辺が安保闘争時代の 雰囲気を反映しているように思う。
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