題名 :『一心太助 男一匹道中記』

登録日時 :02/09/29 23:39

1963年 東映 監督:沢島忠 カラー 85分

シリーズ最終作。タイトルに偽りがあって、実は「男一匹道中」ではない。太 助の新婚旅行の話である。


鯛が江戸の魚河岸に入ってこなくて、暴騰。1匹1両もする。魚屋の太助(中村 錦之助)は、こんな高い魚を売りつけては江戸の庶民に申し訳ないと店を休 んで、女房のお仲(渡辺美佐子)と結婚から1年遅れの新婚旅行に出ることに した。

東海道を下り、駿河に来ると、この地では鯛がじゃんじゃん出まわり、1 匹100文で取り引きされていた。これはどういうことだ?魚屋として太助の血 が騒ぐ。

道中で出会ったチンピラ、源太(ジェリー藤尾)の故郷の漁村、青濱村に行っ てみると、村はヤクザの浜熊(佐藤慶)の一家と、網元の若村屋(平幹二朗) に支配されていた。彼らは代官(稲葉義男)と結託し、漁民の獲った魚を安く 叩いて買い取り、江戸には出荷しないようにして、江戸市場の値を釣り上げていた。
村民たちは、なす術もなく浜熊達に支配されている。父親が浜熊に殺されたこ とを知った源太が、浜熊に暗殺をしかけるが、失敗して傷を負い帰って来 た。源太の恋人、お志津(十朱幸代)が手当てをする。

源太を追って浜熊の手下達が、代貸(田中邦衛)を先頭に村にやってきて、乱 暴で暴力的な家捜しをする。しかし太助が「お前らの親分がピンチだ」と嘘を 言って、ヤクザ達を立ち去らせる。ヤクザ達が親分のところに帰って見ると、親分はピンピン。ダマされたと知っ たヤクザ達は怒り心頭に達し、再び村に向かう。

しかしヤクザ達が途中で出会ったのは、太助に率いられ、武装した村人たちの 行列だった。臆病でヘタレな村人たちも、太助に説得され、遂に立ち上がった のだ。雄叫びを上げて村人たちがヤクザに撃ちかかる。
決死の村人たちはヤクザを圧倒。激しい乱闘の末、ヤクザは壊滅する。まあ、 田中邦衛がボコボコに袋叩きにされるシーンは想像内だが、平幹二朗がおんな じ目に会わされてしまい、彼のこんなカッコ悪いシーンは、あんまり見たことがな い。佐藤慶はジェリー藤尾に父の仇として、討たれた。

村人たちが外に出ると代官が手勢を率いてやってきたが、太助は代官が浜熊達 と結託していた証拠の手紙を示し、退ける。

江戸城では将軍家光(中村錦之助:二役)が、松平伊豆(山形勲)と太助の活 躍を称えながら、今は亡き大久保彦左衛門(月形龍之介)を思い、治世への責 任感を新たに噛み締める。

太助は村人たちと共に、大量の鯛を持って江戸の魚河岸に帰り、大歓迎を受け るのだった。(終)


こういう勧善懲悪ドラマの場合は、悪役側が重要なわけで、田中邦衛、佐藤 慶、平幹二朗と実力者をそろえているが、佐藤慶と平幹二朗はインテリ風の キャラがカブッているように思う。山形勲を善玉で使ってしまったのが、痛い ところ。

錦之助のしゃべくるキャラは、相変わらず上手いが、渡辺美佐子、ジェリー藤 尾相手のテンポのよい会話ギャグと一線を画すのが、馬子役の左卜全との会話 シーン。立て板に水のような錦之助のトークを悠然と受け流す左卜全のゆった りトーク。それに臆することなく、たたみかけるように錦之助が言葉を繋ぎ、 ほのぼのした雰囲気ながらも、これは両者が芸を競う名シーンかもしれない。

大久保彦左衛門は既に亡くなっている設定なので、月形龍之介は回想シーンで しか登場しないが、ドリフターズみたいなコントをやっていて、お茶目。これ を月形龍之介がやった、ということに正直インパクトがかなりあった。錦之助が月形のモノマネをするシーンがあって、私は腹を抱えて笑ったが、あんま り他の観客にはウケていなかった。

ちょっと気になるのは、やたらと太助がイバるところ。「ヤイヤイヤイッ!俺 を誰だと思ってんでい!」って言うんだけど、ただの江戸の魚屋さん、じゃな いの?でもやたらと「天下のご意見番、大久保彦左衛門の一番の子分」を声高 に主張するので、「虎の威を借る狐」みたいでカッコよくない。しかも大久保彦左衛門は死んでしまった人だし、舞台は江戸じゃないので、太助のタンカが、全然通用しない。そこで本当に太助が自分の「男一匹」の力で、彦左 の名に頼らずともここまでできるんだ、って見せるところが、この映画のポイ ントなんだけど、たぶん計算通りにはできてないと思う。

ジェリー藤尾は、なんか私はイヤーな感じ。役柄と関係なく、見た目から漂う 雰囲気が、品性下劣で、心が醜くてよこしまでモラルレスな印象。頭の中が セックスのことでいっぱいで、実の娘さえレイプしそうな感じ。全く根拠のな いひどい誹謗中傷を自分が言っている、ということは承知しているけど、どう しても好きになれない。

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