題名 :『股旅 三人やくざ』

登録日時 :01/12/01 19:56

1965年東映 沢島忠監督 カラー 120分

タイトルからは、やくざ三人組が活躍する話かと思いましたが、そうではなく て、一人づつ出てくるお話を3つ集めたオムニバスでした。

脚本は三人の名前が出る(野上龍雄、笠原和夫、中島貞夫)ので、それぞれ担当 があったんでしょうが、誰がどれを書いたかはわかりません。3つのお話には、 関連はなく、基調トーンも違うのですが、監督・スタッフは同じです。おなじみの「どじょっこ・ふなっこ」の歌から、お話が始まる、という趣向は統 一されてます。




「秋」−体育会系やくざ−

役人を斬って凶状旅を続ける仙太郎(仲代達矢)は、佐原宿の入り口の竹林で片 目の男に襲われるが、返り討ちにする。竹ごと一斬りにしてしまったので、高ー い竹が、2、3本倒れる。男は懐に仙太郎の人相書きと、女物の櫛を持ってい た。

佐原の麹屋一家(親分は内田朝夫)に草鞋を脱いだ仙太郎は、刃物を振り回して 暴れていた女郎・おいね(桜町弘子)の監禁見張り役を引きうけた。おいねは伊之助という川船頭が、一度遊んだおいねのことが忘れられず、夫婦になりた がっているという噂を聞いて、足抜けしてでも一緒になりたいと思って事件 を起こしたのだった。しかし、実はおいね自身もその男がどんな男だったか、覚えていなくて、顔も 忘れてしまった。けれども14歳のときから女郎をして辛酸を舐めているおいね にとっては、それはたったひとつの希望だった。たとえどんな男、かたわだろう が乱暴者だろうが、女としての幸せを手にできる千載一隅のチャンスなの だ。桜町弘子の演技が熱い。

おいねをあわれに思い伊之助を探しに出かけた仙太郎は、伊之助が片目だった と聞いて愕然とする。竹林で仙太郎を襲い返り討ちになった男こそ、伊之助 だった。伊之助は賞金でおいねを身請けするつもりだったのだ。仙太郎は伊之助の弟・卯吉に自分の居場所を代官所に届けて、賞金でおいねを 身請けするよう頼む。そして役人・捕方達の群れに、単身斬りこんで行く。壮 絶な斬り合いの最中に、死を覚悟した仙太郎はほほえむ。(終)

礼儀正しくいちいちきっちりと仁義を切る仲代達矢と、熟れ過ぎたカラスウリ みたいにトウが経った女郎・桜町弘子の交流が、美しくも哀しくて絶品!仙太郎 の旅は死に場所を求めての旅だったのですが、最後のほほえみは納得のいく死に 場所をついに見つけた、満足の笑みなのでしょう。 完成度が高い素晴らしい大傑作。


「冬」−チンピラ系やくざ−

賭場でイカサマがばれてピンチになった老人やくざ・文藏(志村喬)をたまたま そこに居合わせた若い渡世人・源太(松方弘樹)が助けて、二人で逃亡する。文 藏は逃げ際にテラ銭を奪ってきた。源太の狙いはその金である。ものすごい豪雪をかきわけるように、文蔵の案内で二人は雪深い山里の茶屋に逃げこむ。茶屋 は無人だったので、二人はいろりに火を起こし酒を飲み始める。

源太が身の上を語る。百姓の父親がばくちに手を出して死んだ。それから5年間 懸命に生きてきた源太が故郷の村に帰ると、18になったら土地を貸してくれ ると約束していた地主が、お前のように博打を覚えた者には土地は貸せな いと言う。お前も父親同様、身を持ち崩すに違いない、お前にも父親と同じ血 が流れているのだからと。それで源太はこれから本格的なやくざになろうと ライフプランを立てている。あのバカ親父のせいだ、あの最低の親父のため におれはこれから身を汚していくんだ。だからじいさんのイカサマ・テクニックを是 非俺に教えてくれ。
文藏はやめるなら今のうち、と諭す。おめえはまだほんとのやくざの汚さを知 らねえ、おれも説教するガラじゃあねえが、最近は畳の上で死にたくなった。

そこに茶屋の娘が帰って来る。お美代というこの娘(藤純子)は母親のおはる を亡くして、葬式から帰って来たのだった。文藏は賭場からカッパらってきた金 を、「汚い金じゃねえ、あんたの親父さんから預かった」と言ってお美代に渡そ うとするが、お美代はどうしても受け取らない。母子を捨ててやくざになって出 ていった父をどうしても許せないのだと、お美代は言う。
「猿芝居はいい加減にしろ!」と見ていた源太が言い出す。天下の名優・志村喬 をつかまえて「猿芝居」はない、と思うのだが、この金は源太の言う通り、 「垢にまみれた汚れた金」には違いない。

怒った文藏が源太に襲いかかり、取っ組み合いのけんかになる。年齢差が激し いので、源太の圧勝だった。お美代が止めるのも聞かず、源太は文藏をボコボコ にする。すると文藏の破れた袖の隙間から、「おはる命」の刺青が現れる。 文藏はお美代の実の父親だったのだ。そのことを知ったお美代は「出てってぇ!」と、絶叫する。
娘に追い出されて、しょんぼりと肩を落とし深い雪の中に草鞋の素足を沈めな がら、文藏が出ていく。この後ろ姿のわびしさに、唐突に「ブラ ンコこがせてあげたい!」と私は思った。

源太は文藏の後を追い、「娘さんはあんたに出てってほしくなんかないんだけ ど、気持ちと口先があべこべになるんだよ。」と戻るよう説得する。全く子供の 気持ちを親はなんで、そんなにわかってくれないんだ?
そこに賭場からの追っ手達が現れた。文藏を茶屋に押し込めるように帰らせ、源 太は単身で追っ手に立ち向かう。源太一人を死なせるわけにはいかない、と刀を手に出 て行こうとする文藏を、お美代が止める。「おとっつぁん」と初めて呼ばれて、 娘と抱き合い、号泣する文藏。私も泣けた。

文藏父子が外に出ると、雪崩が発生して源太も追っ手も飲み込まれてしまった。 文藏が源太の遺品を見つける。それは、源太の父親の位牌だった。父親を悪し様 にののしりながらも、実は源太も父親を愛していたのだった。(終)

昔はそうでもなかったんですが、最近私は松方弘樹のくどい芝居が嫌い。それでも、このお話の場合、志村喬の達者な演技、藤純子の初々しい演技に、松方弘樹の入れ込み演技が加わることで、非常にドラマの構成がしっくりと締まったように思います。


「春」−へなちょこ系やくざー

うって変わって、こちらはコメディ。

渡世人・久太郎(中村錦之助)がのどかな村を訪れると、村長(遠藤辰雄)を始 めとする村民達から、なぜか大接待。これには裏があって、代官所の役人・半兵 衛(加藤武)が因縁をつけては金を巻き上げていくので、明日殺してほしいと 頼まれてしまう。実は久兵衛はへなちょこな渡世人で、人を切るなんてできっこない。でも見栄っ 張りだから、一応引きうける。「ありがとうごぜいますだ」と村民達は土下座して感謝の意を表し、みなしごの 美しい娘・おふみ(入江若葉)を、夜伽に差し出される始末。でもカタギの 女は抱かない。

夜中に逃げようとしたら、村長の息子(推定10才)に見つかってしまう。でも この息子は久太郎をヒーローだと信じていて、逃げるなんて思いもせず、一緒に 狸のわなを仕掛けに出掛けるハメに。罠を仕掛けて、村長の息子を家に帰し、さあ逃げようと思ったとき、狸が罠に 掛かって鳴り子が一斉に鳴り、村人がみんな出てきた。もう逃げ出しようがない。ヤケクソになって「狸が捕れたぞお!」と絶叫する久太郎は、涙目になっていた。

さて翌日、半兵衛がやって来て、久太郎は対峙するが、軽ーくあしらわれてしま う。半兵衛は居合の達人で、久太郎にかなうはずもなかった。

そのとき別の渡世人仙三(江原真二郎)が村にやってきた。久太郎を見限った村 人達は、半兵衛殺害を仙三に頼む。鞍替えである。でも、おふみと村長の息子 は、まだ久太郎を信じてくれた。結局、仙三はクワセモノで、半兵衛から金をもらい逃げてしまう。

村長は謀反の罪で捕まって、連行される。でもこの縄の掛け方は、SM調の「亀甲縛り」と いうやつで、ギャグが入っていると思うのだが、なぜか映画館の観衆は誰も笑わなかった。その連行道中を久太郎が襲う。 まずは引き縄を切って村長を逃がす。半兵衛が斬りかかってくるが、へなちょこ に逃げまくる。ここが錦之助の素晴らしい芝居。ヘッピリ腰で、まるで殺陣のシロート。もちろ ん、錦之助が殺陣のシロートであるはずもなく、これはシロートを演じるギャ グ、ないしは自分自身のパロディである。
久太郎を圧倒した半兵衛は、ふとしたはずみに狸捕りの罠に首をかけて、死ん でしまった。人が死ぬところで笑うのは不謹慎だと思うが、あまりのマヌケな結末に、私は笑ってしまった。罠を解こうとする加藤武のあせりぶりが、可笑しい。

喜びいさむ村民達を、村長がいましめる。あの人は天狗だったのだ、と。行方を くらました久兵衛をおふみが追う。菜の花畑に身を潜めて、おふみをやり過ごした久太郎だったが、突然やくざ家業 が嫌になる。刀を捨て、カッパを捨て、三度笠を捨て、菜の花畑の畦道を走り出 す。(終)

傑作!錦之助のコメディ・センスが爆発しています。例えば渥美清あたりがやっても全然おかしくない役柄を、錦之助が大熱演。この芸の巾はさすがです。




映画全体としては、沢島監督の万能さ、引き出しの多さが、よく引き 出されていたと思います。コメディもドラマもよくこなします。100点満点です。

映像的には、逆行のシルエットを使ったり、真上からカメラを回したり、という 印象深いショットが素晴らしい。股旅モノらしく、渡世人が黙々と歩く姿を遠回 しに追うショットも秀逸。竹林も菜の花畑もきれいだったなあ。

ひとつケチつけるなら、音楽ですね。ジャズをベースにしてるんですが、アレン ジがひどくダサくって、救いようがない。もっとも当時は「ダサい」という言葉 はまだないんですけど。

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