題名 :『暴れん坊兄弟』

登録日時 :01/11/03 22:32

先頃亡くなった東千代之助の主演映画です。

映画が始まって、とても驚いたのは、フィルムがとってもきれいなこと。ずいぶ ん昔の映画なんですが、傷一つなくて、色も鮮やかに出ています。

1960年 東映 86分 カラー 監督:沢島忠 
原作は山本周五郎「思い違い物語」。脚本は、沢島監督と監督夫人の共同執筆で 鷹沢和善というペンネームを使っています。


物語は江戸から始まります。松平藩の新藩主、松平智信(中村錦之助)は、江戸 屋敷で就任したので、まだ藩主としてお国入りをしたことが、ありません。近々 初の国入りをするので、家臣の典木泰助(東千代之助)に、国詰めを命じます。
この泰助という男、とーんでもなくのんびり、おおらか、無欲な人柄で、江戸屋 敷では「昼行灯」「石仏」「オオバカ侍」と評判の人物。いつもぼんやりと空を 見たり、昼寝したり。しゃべり方も、もっさりしていて、頭のネジが何本か抜け てるみたい。「父におおらかに育てられましたのでぇ。」というのが口癖。とこ ろが殿様は、なぜか泰助が大のお気に入り。

松平藩では大騒ぎ。「殿が送り込んできた男」というので、どんな切れ者が来る か、と戦々恐々としています。 特に藩の材木を横流しして、私腹を肥やしてい た城代家老稲葉(山形勲)、普請奉行井上(原健策)、勘定奉行安藤(沢村宗之 助)はあせりまくります。

国元へ戻った泰助は亡父の親友、山治老人(新藤英太郎)の家にやっかいになり ます。山治の二人の娘のうち、長女の千賀(大川恵子)は泰助に一目ぼれ。大川 恵子はフケ顔で、娘っぽくないなあ。
泰助には泰三(中村賀津雄)という弟がいましたが、こちらは兄と違って、落ち 着きのない粗忽者。あわてて、お膳をひっくり返すのと、襖や障子を倒すのが、 得意技。泰三は大好きな兄を心配して、江戸から後を追ってきます。こちらには山治の次 女、つる(丘さとみ)が一目惚れ。丘さとみは二重あごです。姉よりフケて見え ます。
忘れないうちに書いておきますが、里の娘の役で、花園ひろみも出てきます。前 の二人をさらに上回るフケ顔で、「これが若い娘である」っていう設定自体に、 ちょっとホラー入ってます。この娘から泰助は、材木の横流しの件を聞き出しま した。

それから幾日も経たないうちに、江戸からの情報で泰助の昼行灯ぶりが、城内に 知れ渡ります。とたんに手のひらを返したように、みんなが泰助をバカにし始め ます。これに怒ったのが弟の泰三。
「こんなちっぽけな城の中にいる連中に、兄貴の値打ちがわかるものかあ!」と 大暴れ。兄の悪口を言った連中を片っ端からボコボコに殴ります。
そして何とか兄に手柄を立てさせてやりたいと、行動を開始し、森林伐採の二人 の見張り役人(星十郎、阿部九洲男)をつかまえて、普請奉行に突き出します が、なんせその普請奉行が悪奉行トリオの一人なので、トリオは二人の役人に遺 書を無理矢理書かせて、全部の罪をかぶせ、殺してしまいます。このときの山形勲の悪役ぶりが絶品。強面じゃなくて、ホクホクとこぼれるよう な笑顔が、とってもステキです。

もはや証人もいなくなり、兄弟は手詰まりになりました。悔しがる泰三を、いつ になく真剣な顔の泰助が殴ります。死人が出るようなことは避けたい、と泰助は 考えていたので、粗忽な弟を叱ったのでした。

そんな優しい泰助の人柄に惚れこんだ、下島という勘定方の男(田中春男)がい ました。下島は妻に先立たれて10人の子供をひとりで育てていましたが、生活 が苦しく材木横流しの一味に、帳簿係で加わっていました。
ここで注目は10人の子供のうちで、一番台詞が多い長男役の子供。実はこの子 役は、後の風間杜夫です。

下島は山治の屋敷に証拠の裏帳簿を預けて、脱藩し逃げようとしますが、つか まって殺されます。下島の最期を看取った泰助は、しばらく絶句状態で何も言い ません。しかし突然「わあああああ!!」と咆哮を上げながら、全力疾走で走り だし、途中で丸太(!)を手に、悪奉行達の宴会場にかけつけます。

そして、庭から障子越しに丸太を放り込みます。バキバキと音を立てて障子が壊 れ、女達の悲鳴があがります。何事か、と悪人達が庭を見ると、昼行灯が血相を 変えて、こちらをにらめつけている。
裏帳簿を手に、泰三と山治もかけつけました。たちまち始まるチャンバラ大会。 泰助は丸太を、泰三は木刀を手に大立ち回り。タイトル通りの暴れん坊ぶり。み ごと悪奉行トリオを捕らえたのでした。

やがて殿様も国入り。泰助は功績が認められ、新しい城代家老を仰せつかったの ですが、相変わらず石垣の上でのんびりと星空を見上げているのでした。(終)


脚本がよくできていて、心に残る印象的な台詞がいくつもありました。演出やカ メラワークもなかなか達者です。特に目を引いたのは、冒頭と最後に、泰三がカ メラ目線で「皆さん...」と観客に話しかけて来る演出。ほかの映画でもときど き見かける手法ですが、時代劇で見たのは初めてで、とても効果的でした。

さて東千代之助ですが、とても頑張ったと思います。ただちょっと気になるの は、彼の「姿勢」です。膝や腰の曲がり方が、ちょっと普通と違うんですよ。 走ったりすると、何か違和感あるんですよね。日舞の特訓をすると、骨格が変 わっちゃうのかなあ?

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