題名 :『秩父水滸伝 影を斬る剣』

登録日時 :02/08/24 22:51

1967年 日活 監督:井田探 原作:村松梢風 モノクロ 81分

「必殺剣」の続編だが、何となく任侠物っぽい。




青年剣士、早乙女玄吾(高橋英樹)は、高名な剣術家、山岡鉄舟が江戸で主催する道場・駿風館を目指して、秩父から旅を続けていた。

玄吾が宿をとった宿場町は、御神楽(おかぐら)一家というやくざに支配されていた。この名前は楽しげだが実態は非道なやくざ達は、玄吾が秩父で倒した岡田伝七郎に縁のある連中で、玄吾を狙っている。玄吾は宿で、正義感は強いがケンカはさっぱりの書生・一ノ瀬(南廣)と同室になる。初老の旅やくざ(水島道太郎)や、謎の常磐津芸人(山田真二)とか、一癖ありそうな連中もこの町に留まっている。

また玄吾が秩父で知り合いになった、剣劇士族の一座もこの町で興行しようとやってきたが、御神楽一家に法外なショバ代をふっかけられ、興行が開けない。座長の三浦(佐野浅夫)は玄吾と、小屋主とともに警察に行ってもみたが、応対に出た警察の幹部・黒島(安部徹)は御神楽組と結託した悪徳警官だったので、ニベもなく追い返された。腹を立てた小屋主は、単身で御神楽組に乗り込み、半殺しの目に会わされた。

一ノ瀬の作戦で、この町に今晩やってきた県令の吉田(滝沢修)に、興行を許すよう、三浦、玄吾、一ノ瀬が直訴を仕掛けた。そこにいた黒島が反対し、決着は芝居小屋で、一座の剣士と地元の剣士で剣道の試合を行なって、決めることとなった。

病身の三浦に替わって一座側の剣士として試合に参加すべく、芝居小屋に向かう玄吾の前に、岡田伝七郎の実兄、角之進(葉山良二)が立ちふさがった。問答無用と斬りつけてくる角之進を、丸腰の玄吾はかわすのが精一杯で絶体絶命のピンチ! 窮地を救ってくれたのは、謎の常磐津芸人だった。この芸人の正体は江戸の駿風館の道場生で、村上といい、酒を飲んで一暴れした事件を起こしたため反省の旅に出ているのだった。

小屋に駆け付けた玄吾は、トリ同士の対決で、黒島を得意技の突きで倒し、勝利を収めた。こうして県令から無事に興行の許可が下りた。黒島はやくざとの結託がバレて、警察をクビになった。

やくざ達は腹いせに、旅館の放蕩息子・清次(深江章吾)を人質にとって、玄吾に呼び出しをかける。「ご一緒しましょう。」と玄吾に水島道太郎がついてくるあたり、とても『昭和残侠伝』に似ている。本家ならここで雪が降りだし、「唐獅子牡丹」の歌が流れるんだけど、それはさすがになかった。 二人は御神楽一家に乗りこんだが、ここで水島道太郎が正体を明かす。やくざ世界でも名高い清水の次郎長一家の三五郎、人呼んで「追分の三五郎」が彼の正体だった。「それでもことを構える、ってえのかい?」と、凄む三五郎に御神楽一家はタジタジ。 しかし、狂犬・岡田角之進はひるむことなく斬りかかってくる。玄吾は木刀で岡田の相手をした。そこに警官隊が踏み込んできて、決着は着かなかった。

人質を救った玄吾らの帰り道を、クビになった悪徳刑事・黒島が拳銃で襲って、旅館の主人が撃たれた。 黒島の後を追った玄吾は、待ち伏せしていた黒島配下の不良士族たちに、とり囲まれる。

夜の闇に月の光が士族達の剣を光らせる。 木刀で相手をした玄吾は次々と相手を倒し、最後には黒島の喉と胸を突く。血ヘドを吐いて黒島は地に伏した。

こうして、町の悪党どもを一掃した玄吾は、一ノ瀬、三五郎とともに宿を出て江戸に向かう。その後ろを角之進がつけ狙っていた。(終)




前作と一部のキャストが変わっている。剣劇一座の紅一点、佐久間は今回は山本陽子。前回はもっと色っぽい人だった。岡田角之進も替わったんじゃないかな?深江章吾は前作に続く出演だけど、役は全然違う。

県令役の滝沢修は鹿児島弁の薩摩人に成り切った怪演で、これは見どころ。県令の前で落語を披露する噺家が、三遊亭歌奴(現:圓歌)で、「山のあな、あな」っていう懐かしいネタを演っている。でも吃音者のマネって、今じゃ流せないだろうな。

全体的には、前作ほど胸がトキメク感じがしない。 ヒロインの旅館の娘役(伊藤るり子)が、全然魅力的でないのが、イタい。こういう両目が離れた顔は、時代劇の日本髪にすると、とっても似合わない。小屋主がヤクザ達にいじめられるシーン、角之進がイライラの解消に小鳥二羽の首を刎ねたりするシーンあたりの残酷趣味もどうかと思うぞ。

ところで「突き」って、「守りの剣」なのかな?本作中ではそれが強調されるんだけど、さあ突くぞと重心を落として構える高橋秀樹の野性味溢れる姿勢と、喉を突かれて血ヘド吐いてぶっ倒れる安部徹の壮絶さからは、全然そうは思えなかった。
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