題名 :『宮本武蔵』

登録日時 :02/10/26 20:08


1961年 東映 監督:内田吐夢 原作:吉川英治 カラー 110分

シリーズ第一作。このシリーズは壮大な群像ドラマである。主演の錦之助はもちろん大熱演だがそればかりが見所では決してなく、三国連太郎のさわやかさ、木村功のダメ男っぷり、入江若葉の初々しさなどが、時に錦之助以上に目立ってとても魅力的だ。



戦の終わった関が原で、新免タケゾウ(中村錦之助)は泥の中をはいずり回って、相棒の本位田又八(木村功)を探す。又八は腿に槍傷を負っていたが、生きていた。二人は、死兵の武具を集めて売っている母娘、お甲(木暮実千代)と朱実(丘さとみ)に匿ってもらう。奪取した鎧の血を屈託のない笑顔で、洗い流す朱美、ちょっとシュール。傷の手当てを受けるうち、又八と色気ムンムンのお甲はデキてしまった。一緒に村に帰ろうとタケゾウが誘っても、又八は乗らない。

やがて野武士の一団が、金目の物を求めて母娘の家に押し入ってきた。タケゾウは棒切れ一本で野武士たちを撃退。たまらず逃げ出した首領、辻風典馬(加賀邦男)を馬で追っかけて、棒で殴り殺した。馬に飛び乗る錦之助がかっこいい。スタントマンの代役かもしれないけど。
タケゾウが帰ってみると、又八とお甲、朱美は三人で姿を消していた。地頭の息子である又八を村から連れ出した責任があるので、タケゾウは已むを得ず一人で村に帰り、又八の母親のお杉オババ(浪花千栄子)と又八の許婚、お通(入江若葉)に、せめて又八は生きていることを知らせよう、と考える。

豊臣方の落ち武者を捕らえるための検問が道中に設けられていたので、タケゾウはこれを突破して、村に帰って来た。しかしすでに姫路城主の家臣、青木(花沢徳衛)が兵を率いて村にやってきていた。その上、乱暴者のタケゾウは村中から憎まれていたので、身を潜めなければならなかった。

闇に紛れてお杉オババの元を訪ね、又八は生きている、と告げたタケゾウをオババはねぎらってくれたので、タケゾウは思わず泣き出す。しかしタケゾウを風呂に入れている間に、オババは下男の権三(阿部九州男)に命じて青木らを呼び寄せた。とても腹黒いババアである。世のババア嫌いな人たち、とくに姑に泣かされている嫁たちの思いが、いみじく体言されている。(ウソ)

山に逃げたタケゾウを追って、青木の手勢に村の者を加えた総勢200人の部隊が毎日山狩りをするが、タケゾウは捕まらない。そこで乗り出した漬物研究家としても名高い、村の寺の和尚、沢庵(三国連太郎)が、お通と二人で山にでかけ、タケゾウを捕まえて帰ってきた。
オババをはじめとする村人たちは、今にもタケゾウを殺しかねない勢い。沢庵はリンチを防ぐため、タケゾウを寺の境内の大きな杉の木に吊るして、さらしものにした。

吊るされながらもオババや和尚や村人をののしっていたタケゾウだったが、嵐が来たりして、さすがに弱る。そこで和尚が説教する。お前は人間の本当の強さを知らない。知恵によって開かれる世界を知らない。あわれな奴だ。
タケゾウも反省してやり直すチャンスをくれ、と命乞いをするが、沢庵は許さない。しかし夜になると鎌を手にしたお通が現れ、縄を切ってタケゾウを助ける。二人は峠まで逃げた。タケゾウはお通に再会の約束をして、人質に取られている姉のお吟(風見章子)の救出に向かうが、そこは無人の荒野と化していた。ここはまったくどうでもいいようなシーンなのに、なぜかとても力が入った映像。ちょっと意味不明。

人々の旅立ちが始まる。
オババは権六を連れて、又八を探す旅に出る。お通は姫路城下の橋のたもとで行き倒れ、竹細工屋の老夫婦(宮口精二、赤木春恵)の元で仕事を手伝いながら、タケゾウを待つ。ところで赤木春恵って、こんな昔からバアさん役だったのか。

タケゾウは沢庵に姫路城に連れて行かれ、城主池田輝政(坂東簑助)の薦めもあり、白鷺城の天守閣の密室に入れられる。するとタケゾウの先祖にあたる以前の城主・赤松家の亡霊たちが現れて、知恵がないために滅んだ一族の無念を訴え、知恵の光を身につけて赤松の血を浄化してくれとタケゾウに諭す。

タケゾウは密室で猛勉強を始める。時が経ち、ライオン丸のようにひげも髪も伸び放題のタケゾウの目には、知恵の光が宿りつつあった。(完)



というわけで、物語はシリーズ第2作、『般若坂の決斗』に続く。


この作品でのタケゾウは喜怒哀楽が剥き出しで、ある意味では2作目以降の求道者然としたムサシ像よりも魅力的だと思う。顔が黒すぎないか?ってのがちょっと気になる点だが、白塗りスタアからの脱却を目指す錦之助の気合はひしひしと感じられる。

しかしそれを超えるのが、三国連太郎の悠々爽々とした沢庵のキャラクター作り。この映画を見るのは、もう5回目ぐらいだけど、見るたびに三国の演技の素晴らしさに見入ってしまう。

ところでお吟はどうなった?何度見てもわからないので、いつも気になる。


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