題名 :『子連れ狼 冥府魔道』

登録日時 :03/10/05 12:01


1973年 勝プロ・東宝 監督:三隅研次 脚本:小池一雄、中村努 カラー 89分

シリーズ6作中の第5作目。これで同シリーズは全部見たことになるが、これが一番おとなしめというか、いつものようなブッ飛んだシーンは少ないのがちょっとさみしい。「乳母車から機関銃」「仏像に変装して潜む刺客」、「スキーと橇で大殺陣」といったあきれかえらんばかりのシーンが、懐かしく思い出される。



旅を続ける拝一刀(若山富三郎)・大五郎(富川晶宏)親子の前に、牛頭馬頭の画で顔を隠した行者が現れた。いきなり斬りかかってきて一刀に倒された行者(戸浦六宏)は、自分は黒田藩の藩士で、一刀に暗殺を依頼する藩命を帯びている、と語る。そして500両の頼み料のうち100両を渡し、他の4人の藩士が自分のように貴殿の腕試しをし、敗れたら100両を渡し、仔細を語るだろう、と言い残して死ぬ。ずいぶんと回りくどい頼み方だな、と思う。第一、ただ道を歩いて一刀を探す、というのが信じられない。一生一刀と行き会うことがなかったら、どうするんだろう?
もちろん、牛頭馬頭の画をつけた頼み人たち(志賀勝、石山律、天津敏、山城新伍)は次々と現れ、一刀に斬られては100両を渡し、暗殺依頼の仔細を語って死んでいく。命がけの紙芝居という感じで、いかにも小池一夫風。なお、天津敏が「水鴎流の秘儀を見たい」とリクエストしたので、一刀が見せた秘剣「波斬りの太刀」は、腕を水中に隠して刀を持ち替えるという、とても卑怯な技だった。

暗殺の仔細は、こういうことである。
黒田藩の前藩主(加藤嘉)は隠居し、5歳の若君、松丸君に家督を譲った。しかし松丸君が亡くなった為、側室の産んだ女児の浜千代姫を松丸君に仕立てている。その証拠のお墨付きの文書を、信頼する菩提寺の住職、慈恵(大滝秀治)に預けたが、実は慈恵は幕府の隠密であり、そのお墨付きを柳生烈堂に渡そうとしている。慈恵を暗殺し、お墨付きを奪い返して欲しい、というのが依頼内容だった。

さっぱりわからないぞ。
若君の入れ替わりを秘密にしたいのなら、お墨付きなんぞ書かなきゃいいのだし、しかもなんでそれを慈恵に渡したのだろうか?

一刀は寺で一人きりで読経する慈恵の前に「お命頂戴仕る」と現れたが、斬れなかった。なぜ斬れなかったのかは、よくわからない。見た目でいうと変なオーラをまとった慈恵が薄気味悪かったから怯んでしまった、という感じだった。なお読経の声は大滝秀治の声ではないと思う。

その間に大五郎が事件に巻き込まれていた。
女スリのお葉(佐藤友美)が追われる途中で、盗んだ紙入れを大五郎に持たせてしまったのだ。スリの一味として大五郎は捕まり、公開で叩き刑に処せられそうになってしまった。さすがに年端もいかぬ子供に罪は着せられぬと、群集の中にいたお葉が名乗り出て、自らお縄になった。
しかし、それでも大五郎はお葉に紙入れを渡されたと言わない。頭にきた岡引(山内明)は大五郎に吐かせようと何度も叩いた。本当のことを言って、と傍にいるお葉本人が頼んでいるのに、それでも「お葉のことは誰にも言わない」という約束を大五郎はしっかり守ったのだった。

その晩、釈放された大五郎が眠りについた頃、一刀らの仮の宿に女の忍びが現れた。女(安田道代)は不知火と名乗り、500両を差し出して黒田藩にからむ別の暗殺を依頼した。親子三人がターゲットだが、子連れのあなたに引き受けてもらえますか、と尋ねる不知火に、「我ら親子、冥府魔道を歩む者」と一刀は頼みを快諾した。
翌日、大五郎を連れて、一刀は川に向かった。そして「これより冥府魔道に入る」と宣言して、川に潜った。そうか、冥府魔道って水中にあるのか。つうか、台詞がシチュエーションに合ってないんだよね。
おりしも、川の上を慈恵の駕籠を乗せた船が対岸を目指して進んでいた。対岸では生きている人間とは到底信じられない顔色をした柳生烈堂(大木実)が、待っている。もう、顔面から粉を吹いちゃっている。一刀は水中を泳いで船に追いつき、駕籠の底ごと船底を円形に切り抜くと、スポーンと達磨落としみたいに、慈恵が落ちてきた。一刀は慈恵を殺し、お墨付きを奪う。

黒田面頬衆を護衛役に柳生の追手をかわした一刀親子は、黒田城に入り家老の将監(岡田英次)、旧藩主と若君母子と対面する。一刀が差し出したお墨付きは、すでに不知火によって白紙と化していた。おどろく将監を前に一刀は、正室の嫡男である本物の松丸君が生きていて幽閉されている、という秘密を暴き立て、「武門の誉れ高い黒田藩にあるまじき、武士道に悖る行ない」と非難した。姫を若君に仕立てたのは、側室かわいさに狂ってしまった旧藩主がおかした愚行だった。

五歳の姫は無邪気な顔で「斬れ!」と命令し、黒田藩士たちが一刀に斬りかかる。一刀は愛刀の胴太貫で斬って斬って斬りまくった。すんごい流血で、ここまで現実離れしていると、館内のあちこちで笑い声が漏れ出す。胴を真っ二つにされた侍が、石榴のような真っ赤な切り口を見せて倒れるところは大爆笑。

返り血まみれになった一刀が奥の部屋に行くと、将監に切腹を強要されて旧藩主が必死に抵抗していた。その後ろにゆらりと立った一刀は無言でゆっくりと刀を振り上げて、介錯のポーズ。このポーズがすごくキマッているのと、暴れる旧藩主の醜態の対比が、やっぱり可笑しい。一刀の刀が振り下ろされ、旧藩主の白髪首が床にゴロゴロころがった。反す刀で、一刀は怯えてすくむ側室と姫のふたつの首を一撃で刎ねた。死亡率200%の危険な男、拝一刀!
将監は「名君らしいまことに立派な最期でござった。」と一刀に礼を言った。
ただちに幽閉されていた若君が解放され、新藩主となった。これ、ちょっと早すぎないか?
一刀親子が海辺に行くと、不知火が陰腹を切って死を迎えようとしていた。水平線に向かって漕ぎ出す子連れ狼の船を、不知火は満足げにみつめていた。(完)



わりと普通の娯楽時代劇だけど、やっぱりマンガ調。一刀が走るともうもうと土煙が上がる。雨が降るところはノアの箱舟が要るんじゃないかという、超ドシャブリ。ストーリーだけでなく、映像面でもマンガ調なのだ。
マンガは所詮作り事なのだから、そう割り切って楽しめばいい、と個人的には思うのだが、最近の少年犯罪の報道を見聞きすると、「子連れ狼」や「巨人の星」に教育の理想を学べ、とか言い出す人が現れそうで、心配だ。
現実がマンガに擦り寄っては困る。現実と別の次元にあればこそ、マンガは面白いのだ。
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