題名 :『影狩り』

登録日時 :03/03/09 20:34


70年代に、人気の翳った時代劇映画が、劇画原作を映画化することで、少し人気を取り戻した時期があった。しかし『子連れ狼』『御用牙』『影狩り』の3シリーズが代表として残るだけでブームは終わってしまった。若山富三郎は、自分が最初に『子連れ狼』で作った流れを、裕次郎が『影狩り』でダメにした、と言っていたらしい。

私は『子連れ狼』が『影狩り』より上だとは全然思わない。同じように支離滅裂な物語を過剰でチープな残虐趣味の演出で作った、荒唐無稽なB級バカ映画だと思う。それでもチャンバラに関する限り、若山のほうが裕次郎よりは、はるかに上だと思うし、先の若山の発言は映画そのものの比較ではなく、チャンバラ名人としての若山の自負が言わせた言葉だと理解している。

何しろ石原裕次郎のチャンバラはひどい。とても腰高でデクノボーのような立ち姿がそもそも決まっていないし、刀の使い方もバサリバサリと草刈りでもするみたいに左右に払うだけ。愕然とするぐらいダメなのだ。

1972年 製作:石原プロ 公開:東宝 監督:舛田利雄 原作:さいとうたかお カラー 90分



但馬国出石(いずし)藩は貧乏な小藩だったが長年の苦労の結果、領地内の金脈を探りあてた。しかし幕府の隠密・「影」によってこのことが知れれば、たちまち領地は幕府に取り上げられてしまうだろう。出石藩家老、牧野(辰巳柳太郎)は対策として、影狩りを雇った。秘めた過去を持つ三人組の浪人、室戸十兵衛(石原裕次郎)、日光(内田良平)、月光(成田三樹夫)からなる影狩りが出石藩にやってくる。すでに影は証拠の金槐を奪って藩外に持ち出し、江戸城に向かっていたが、影狩り達は道中で出会った影を皆殺しにし、金槐を奪い返していた。

影狩りが藩内に入ると、牧野をはじめ藩の重役達が出迎えて待っていた。重役の一人・高坂(江原真二郎)は、出会いからいきなり影狩りに対して無意味に敵意をむき出しにする。顔つきからいってどう見ても悪役である。たぶんこの男は影と通じているのだろう、と観客にわかってしまう。金は取り戻したものの、次に影はどう出てくるだろうか?三人はとりあえず藩内の見回りをする。

しかしその頃、幕府の老中田沼意次(丹波哲郎)のもとには、証拠の金槐が届けられていた。影の首領・伊賀三の組支配、陣馬仙十郎(草薙幸二郎)は先に入手したこの証拠の秘中の秘の入手経路を隠滅するため、別の金槐を影たちに探させたのだという。あいつだ、高坂だ、と観客はみな思う。高坂は腹黒い裏切り者であいつが証拠の金塊を渡したのだ。
腹黒い奴がいかにも腹黒そうに見えるっていうのは、演出として失敗だと思うのだが、平気でそういうことをやるのが、やっぱりB級なんだな。わざわざ「草」の解説までやってくれる。幕府は各藩にかなり前から「草」という工作員を送り込んでいる。その者は潜入先で結婚し、子供を作り、何代にもわたって秘密の役目を引き継ぐ。いかにも代々その藩の者という顔をして回りを安心させ、いざというときには裏切るのだ。なるほど、高坂は「草」なのか。
それから田沼が影狩りの正体について尋ねると、仙十郎は日光・月光の本名が乾武之進・日下弦之助であることまでしか突き止められませんでしたと言う。最大の謎であった本名までわかったなら、もっといろいろわかっていいんじゃないの?こいつらバカすぎないか?

幕府は早速、国替えを命じてきた。しかし牧野には最後の奥の手があった。戦国時代の末期、大阪の戦いで活躍した牧野の先祖に、家康が功章として与えたお墨付きの文書が、牧野家に代々伝わっている。これを幕府に見せれば国替えも取り消しになるだろう。辰巳柳太郎はかくしゃくとした老人を演じ、声に張りがあってとてもいいが、チャンバラがないのが惜しい。
家康のお墨付きを江戸に届ける役目を命じられたのは、なんと高坂だった。途中で「影」が襲撃してくるだろうから、と影狩り三人組が護衛を引き受けた。急に映画はロード・ムービーになる。

なお城下で十兵衛を追う鳥追い姿の女、千登世(朝丘ルリ子)が高坂らに発見され、「女の足で追ってこれるのなら付いて来い」と、江戸までのルート地図を渡される。そして高坂らは馬で出発する。おいおい、馬を走らせていくのなら、女の足も男の足も関係なく付いていけっこないでしょ?でも千登世は付いていくのだった。ストーカー、おそるべし。

道中で最初の影の襲撃を影狩り達は撃退する。それ以降は影の襲撃もないが、影狩り三人の過去が、少し明らかになる。
十兵衛は影によって取り潰された藩の家老の息子で、幼い藩主の切腹の介錯をつとめたあと、影狩りとなった。千登世もまた同藩の家老の娘で十兵衛とは将来を誓った仲だったが、藩が取り潰しとなったとき自害した父の遺言、「十兵衛と共に潔く死ね」を果たすべく、十兵衛を追っている。
日光は藩務めしていた頃、一目惚れした城の女中と祝言をあげることになっていたが、その直前、影によって藩主が毒殺され藩は滅び、祝言も流れて国を出た。婚約者とはプラトニックな関係だったのに影に引き裂かれた反動で、今はやれるときにやっておこう、という色キチガイになっている。
月光もまた影の被害者の一人。藩に追われる朋友をわけもわからず自宅に匿ったが、実はこの友人が「草」だった。留守の間に自宅に火がかけられ妻子は焼死。「草」は逃げてしまい、数日後に藩は潰れた。月光は今も影と戦っている。

さて道中は続く。影の目をくまらすためと称して、高坂は東海道から甲州路に道を変えた。小仏峠の農村を日光が偵察すると、村の人は全員惨たらしく殺されていた。しかし高坂や他の影狩りと再び行ってみると、死体なぞなく、生き生きとした村人達が、旅の一行を迎えてくれた。日光は目をパチクリ。村人が全員、影にすりかわられている。十兵衛は村人の中に老人や子供がいないことで、それに気付く。

村人のふるまってくれた料理は、やたらと塩辛かった。当然夜中に喉が渇く。出石藩の藩士たちは毒入りの茶を飲んで死亡。影狩り達は姿を消した高坂を追うが、そこには影の罠が用意周到に張られていた。奮戦するも傷つき倒れる日光と月光。日光は竹槍で胸を貫かれるのでこれは死んだと思ったが、最後までむちゃくちゃ元気なのだった。

十兵衛は拳銃を持った仙十郎を千登世のサポートで倒し、さらに二刀流の高坂を死闘の末倒す。その上、一緒に死んで、と襲い掛かってきた千登世を一刀で返り討ちにぶっ殺す。石原裕次郎と朝丘ルリ子、日活で数々のラブ・ロマンスを演じ続けてきた二人が、こういうことになるとは。

影狩りはお墨付きを手に、江戸に向かう。(完)



裕次郎の殺陣は全然ダメだが、内田良平、成田三樹夫の悪役俳優二人が善玉で小気味のいいアクションを見せる。ドラマの壮絶なドロドロ感は続編の『ほえろ大砲』のほうが上だと思うが、富士山を背景に三人が馬を駆るシーンとか、映像に大きさ、スペクタクルがあるところは買う。

でもやっぱり裕次郎のヘタクソな殺陣で減点される分がかなり大きい。顔、丸いし。
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