題名 :『必殺!主水死す』

登録日時 :03/02/28 01:09

1996年 松竹 監督:貞永方久 脚本:吉田剛 カラー 100分

前にTVで見たときは、とても面白くなかった記憶があるのだが、映画館でみるとそうでもなかった。藤田まこと・津川雅彦の老人対決が、戦い続ける男の悲哀とハード・ロマンを、それなりに感じさせる。以前は両者の大仰な芝居が、 過剰でクサく思われたのだが、大きなスクリーンだとイメージが変わる。




仕事人中村主水(藤田まこと)は、おけい(東ちづる)と浮気をしていたが、 寄る年波に勝てず、若いおけいを満足させられずに悩んでいた。 主水の留守の間に自宅では、せん(菅井きん)とりつ(白木万里)が、主水のヘソクリの隠し場所をみつけ、喜んでいた。

さて話は本題にはいる。江戸城大奥では、2つの派閥が壮絶な権力争いを繰り広げていた。
A.お光津の方派
将軍家世継ぎ・家定(細川ふみえ)の生母、お光津(松井一代)の方の一派。 大奥掃除人の葛西衆を従える。葛西衆は表向きは清掃を担当する葛西村の百姓 達だが、実態は凄腕の隠密部隊であり、リーダーは権の四郎(津川雅彦)だった。サブリーダーは四郎の息子・清太(野村祐人)。
B.姉小路派
上臈年寄の姉小路(柏木由紀子)を中心とする一派で、大奥女性部隊の別式女を使う。

姉小路は引退させられた先の老中、水野忠邦(宝田明)と組み、お光津の方派が人知れず捨てた家定の双子の弟を追う。そのために絵師の葛飾北斎(鈴木清順)に家定の似顔を書かせ、左目の下にほくろを入れて双子の人相書きを作成した。人相書きが完成すると口封じのため北斎を、印刷が完成すると版画の彫師・刷師を心臓麻痺にみせかけて暗殺した。北斎と懇意だった主水は北斎の娘・お栄(美保純)に頼まれ、公的には病死とされた3人の変死事件の捜査を独自に行なう。

一方、お光津の方派も姉小路派の動きを察し、仕事人を使って世継ぎの弟を捜索・暗殺することにする。仕事の依頼を引き受けたのは、おけいだったが主水と勇次(中条きよし)、秀(三田村邦彦)らはお家騒動がらみの仕事に気乗りせず断った。仕事を引き受けた別の仕事人のグループと、別式女達、それに葛西衆は江戸のあちこちで、三つ巴の衝突を人知れず繰り返す。

しかし、彼らのたずね人を見つけたのは主水だった。大道芸の母子・お夢(名 取裕子)と捨吉(細川ふみえ:二役)に出会った主水は、捨吉が人相書きの人物であることに気付く。そして母親のお夢は記憶をなくしていたが、昔の仕事人仲間のお千代だった。主水は母子を守ろうとするが、おけいや葛西衆に捨吉がみつかってしまう。葛西衆のリーダー四郎が、これまた昔の仕事人仲間・清吉であることを主水は 知った。四郎と主水はお互いの技量をよく知っているので、うかつに手出しができず事態は硬直する。

四郎は主水を味方に引き入れるべく、別式女の仕業に見せかけてお栄を殺す。 四郎の作戦通り、怒りにかられた主水は、姉小路一派を自分が壊滅させるかわ り、お夢母子に手出ししないことを四郎に約束させ、お栄の恨みを晴らそうとする。大奥に警備要員として入り込んだ主水は、姉小路と水野を殺害する。葛西衆の手引きで別ルートから潜入したおけいたちも別式女と戦い、殺されそうに なっていたお夢母子を助け出す。しかし、葛西衆が裏切り仕事人たちを殺し母子をさらってしまった。勇次によって助け出されたおけいからそのことを聞き、主水は自らが頼み人となって、勇次・おけい・秀とともに葛西村に乗り込む。葛西衆の上司・お光津の方は勇次によって鮮やかに葬られた。

主水をアジトの小屋に迎え入れた四郎は、全てを打ち明ける。主水、清吉(四郎)、お千代(お夢)の3人はかつて仕事人仲間だったが、お千代と夫婦になったのは清吉だった。しかし夜の営みの最中にお千代が主水の名を呼んだことから、清吉は主水とお千代の仲を疑う。やがて2人には男の子・清太が産まれたが、この子が主水の子ではないかと清吉は苦しんだ。そして嫉妬のあまり、仕事中の事故にみせかけてお千代と主水を殺そうとしたが失敗。お千代は そのときの怪我で記憶を失ったが、主水は無事だった。
それから嫉妬に狂った清吉は遠大な復讐計画をたてた。清太を自分の右腕として育て、主水を実の息子に殺させようというのである。今晩ようやく長年の夢がかなうと清吉は大笑い。 しかしお千代が記憶をとりもどし、清太は間違いなく清吉の子供だと言う。事態は混迷し、清太は「どっちが父親か知らないが、決着はあんたらで勝手につ けろ」と武器を捨ててしまう。

長年の復讐計画が破綻し錯乱した清吉は、命令を拒否した清太を素手で絞め殺してしまう。そして次に主水を襲ったが、主水は清太の武器(長い鉄製の火箸みたいなもの)を清吉の股間の柔らかそうなところに突き刺し、ズブズブと深く押し込んで、瀕死の重傷を与えた。

この先の展開は、全く観客の予想を超えるものであった。

一件落着と思いきや、主水を背後からお千代が突き刺す。主水は背に刺さった刃物を引き抜き、お千代を刺し返す。もつれるように倒れる二人。そのとき瀕死の清吉が予めしかけた爆弾を爆破し、小屋が炎上する。葛西衆の手から捨吉を奪還した他の仕事人たちは、呆然と炎上する小屋をみつめる。殺しに明け暮れた男・中村主水の人生を昇華するように、炎は激しく燃 え上がる。

葛城ユキの主題歌が流れ始める。(完)




こうやって最後まで見てみると、唐突に思えた冒頭の主水の浮気シーンは、主水の女性遍歴の一エピソードとして、意味を持っていたように思える。この男、結局女で失敗して一生を終えてしまったのだった。作り手は「好色一代男」をやりたかったんだね。

でも藤田まこと、年取りすぎ。顔のシワとかシミがアップになるとかなりつらいが、仇役の津川雅彦もその点は同じなので、バランスはとれている。彼らの実年齢を考えると、アクションなんか、どちらもよくやったと言えると思 う。宝田明なんかヨイヨイなのにね。

三田村邦彦もフケたなあ、って気がする。もう「若者」じゃないので、顔の 「疲れ」がかなり苦しい。中条きよしはメークのせいもあってそんなにフケは感じない。美保純も名取裕子も実はそんなに若くないんだが、主役がジジイ連 中なので、それなりに若く見える。細川ふみえはほんとに若いのだが、ちょん まげ結って若君役っていうのは、やっぱり無理があったと思う。朝丘ルリ子の 若い頃によく似ているのに、あれじゃまるで志村けんの「バカ殿」コントだ。
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