題名 :『必殺!X 黄金の血』

登録日時 :01/03/04 11:51

1991年。製作:松竹・朝日放送・京都映画 配給:松竹 監督:舛田利雄 脚本:吉田剛

思いっきりダルダルな映画である。日本映画、特に時代劇映画がいかにしてダメになったかという資料的価値はあるのだが、正直この作品で観客を集めようとしたのが信じられない。生きていくのが嫌になるようなヌルーイ映画で ある。何か悩み事をお持ちの方は、決してこの映画を見てはいけない。

まず出演者が多すぎる。その出演者達にいちいちそれなりのエピソードを与え ようとするので、構成が限りなく散漫になり引き締まらない。仕事人として登場するのは、以下のメンバー。
名前(俳優)        仕事の手法
中村主水(藤田まこと) 刀で斬る
秀(三田村邦彦)    かんざしで刺す
政(村上弘明)     (今回はなし)
お歌(光本幸子)    お面を投げる
朝吉(大沢樹生)    刃を仕込んだ扇子で斬ったり刺したり
夢次(山本陽一)    ピストルを撃つ
おむら(名取裕子)   櫛をブーメランのように投げる
金平(佐藤蛾次郎)   トウガラシの粉を撒いて目をつぶす
腕助(安岡力也)    シャボン玉でめくらましした後、トンファで殴る
お松(キューティー鈴木)プロレス技
お種(尾崎魔弓)    プロレス技
千吉(保坂尚輝)    飛びクナイ

悪役側は
勘定奉行太田(宇都宮徳馬)
両替商後藤三之助(岸辺一徳)
後藤の内儀(山本陽子)
これに「地獄組」という最強の暗殺集団が登場。

他にも元力士の役で荒瀬、ヤクザな色男役で白竜、マヌケ男の役で岡本信人などが出演するが、彼らの場合、あまりに「そのまんま」である。これだけ多勢出て、主人公は誰だったかと思い返すと、どうもお朝(酒井法子) だったような気がしてならない。だって登場シーンが一番多かった。

この映画のダメなところの第二点は、企画・演出のバランス。 TVの「必殺シリーズ」は、元々はハードボイルドな「硬派」路線だったの が、中村主水登場後のある時期からコミカルな「軟派」路線になっていき、それが行きすぎるとやや「硬派」に戻してみたりといろいろマンネリを打破すべく試行錯誤を繰り返していた。 そういった経緯を踏まえた上で、この映画は「硬派」なのか「軟派」なのか? どうもよくわからない。バラバラで一本スジの通ったところがない。おまけに 主演(?)のノリピーの演技が学芸会みたいで完全に浮いており、観客は固まってしまう。途中でお朝は頭がおかしくなって、新興宗教の教祖になってしまうという展開にも唖然とした。いったいどんな映画を作りたかったのか、全く意図がわからなくてついてゆけない。サブタイトルの「黄金の血」というのも、なんのことやら。

決定的にダメだと思う第三点は、細部を手抜きしすぎ。 もともと荒唐無稽な設定ではあるが、シナリオは行き当たりバッタリで、緻密な計算が全くないばかりか、整合性すらない。多勢の出演者を扱うだけで、青息吐息なのか。映像も手抜きしすぎ。 いろいろ「飛び物」が登場する。お面・櫛・蝙蝠などだが、これがみんな「吊り」が一目瞭然で、哀しくなる。もうちょいとなんとかならないものだろう か。特に蝙蝠は見るからに作り物で、全く生物に見えない。 金塊が爆破されて金箔になって雪のように降るシーンも、安っぽい合成画像で とてもトホホだった。(「星の金貨」の先取りか?)大道具、小道具、衣装なども手抜きしまくり。石灯籠は発砲スチロールなのが見え見え。アクション・シーンであの衣装はないでしょう。

「地獄組」は元々佐渡金山で、囚人達が暴動を起こしたときの鎮圧部隊として結成されたという設定。灯りのない坑道で活動できるよう全員目は見えず、異常に発達した聴覚を武器に、蝙蝠に先導させて行動する。 というアイデアはなかなかだと思うが、装束は一言で言えば「バットマン」。 行動パターンは一言で言うと「ショッカー」。首領の赤目に扮したのは、特殊メークした天本英世。あまりにチープでイージー。

真面目に仕事する気あるのかあ!

後にTVのスペシャル版で流すためだろうが、時間が1時間44分と短めなのは、助かった。エンディングでは藤田まことの歌が流れたが、これがフランク永井ばりのバリトンでなかなか聞かせるのが、トホホの駄目押しとなってい る。

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