題名 :「必殺!」

登録日時 :01/05/20 17:45

1984年 松竹・朝日放送 監督:貞永方久 脚本:野上龍雄・吉田剛

「必殺!X 黄金の血」はどうしようもなく悲惨な駄作だったが、こちらの「必殺!」は結構イケテルと思う。

なんといっても、観客の期待のポイントをちゃんと押さえている。 それは例えば、「TVドラマでは仕事の時間が短いのでもっとタップリ見たいぞ」とか、「単なるワルでなくもっと強力な敵と戦うシーンが見たいな」とか、「仕事人達の過去をもっと知りたいわ」などといったことだが、作り手側がちゃんとそれに応えようとして、どういう映画を作りたかったのか、とてもよくわかる。

大傑作とか感動作とか、歴史に残る名作とか、そういう系統ではなく、あくまで B級娯楽映画ではあるが、及第点の完成作になっている。ま、「黄金の血」に較べれば、全て成功作と言えてしまうのではあるが。




江戸市中で次々と六文銭を口にくわえた他殺死体が発見される。六文銭は三途の川の渡し賃。被害者の身内の者が誰も名乗り出て来ないことから、中村主水は被害者達が仕事人ではないかと推理する。仕事人の多くは無縁者なのだ。りくはそれを聞き、思い当たることがあるらしく、何事かを調べに旅に出かける。やがて主水の前に殺し屋グループ「六文銭」の使いの謎の女が現れる。江戸の祭りの日に面白いものを見せてあげると言う。秀や勇次にも「六文銭」が同じこ とを告げてきた。

にぎやかな祭りの日、主水達が目撃したのは、別グループの仕事人達(芸者、屋根葺き職人、タイコモチ)が「六文銭」に白昼惨殺される光景だった。「六文銭」は黒い陣笠・黒いハッピ姿で顔を白塗りにした屈強な多勢の男達で、漆黒の神輿を担いでまるで疾風のように標的に走り寄ると、ターゲットを神輿に巻き込んで全身の骨を粉々にする。あまりの素早さのため、白昼であっても一般人には殺人が あったことさえわからない。屋根葺き職人の政だけはかろうじて一命をとりとめ、主水らの介護を受けて回復し、復讐を誓う。

旅先からりくが帰って来る。六文銭の首領はかつてりくが仕事を教えた庄兵衛という男だった。上州で死んだものと思われていたが、身代わりを立てて生き延びていたことを、りくは確かめてきたのだった。早速仕事人達は庄兵衛を襲おうとするが、もはや庄兵衛はただならぬ「怪物」だった。いたいけ な子供を平気で人質にとる、その「完全悪」の圧倒的迫力に呑まれてしまい、仕事人たちは いったん引き下がるしかなかった。

「六文銭」との全面抗争が避けられないと覚悟を決めた仕事人達は一匹狼の仕事人達に助っ人を頼もうと考える。だが彼らが接触をはかった仕事人のうち、 全く使えそうにないキツツキの五平と霞の半吉は六文銭に殺され、使えそうな人形浄瑠璃の人形使い・朝之助は協力を拒否。協力してくれることになった鎖筒 (くさりづつ、という武器)の使い手、時次郎は飲み屋のケンカでなんと一般人に刺し殺されてしまい、時次郎の弟分の石亀はどこかに逃げてしまった。結局、主水、りく、勇次、秀、加世、それに政夫妻を加えた7名で「六文銭」に 挑むことになる。若い順之助は主水が強制的に参戦を止めた。

仕事人vs「六文銭」の死闘がついに始まった。
最初の戦闘場所は寺の境内、さらにその裏の竹林、湿原といったアウトドアなのだが、なにせ六文銭は屈強な肉体を持った戦闘のプロの上、人数が圧倒的に多 い。まるで軍隊。7人で奮戦するも次第に仕事人達はじりじりと追い込まれ、遂に政とその妻が倒れた。

川縁に追い詰められた仕事人達を救出に現れたのは、気まぐれな人形使いの朝之助だった。 朝之助は主水達を船に乗せ、自分が公演中の芝居小屋に連れていく。「六文銭」 も後を追って来て、バトル・フィールドを芝居小屋の中に移しての第二戦が始ま る。
しかし、屋内戦こそ仕事人達のホーム・グラウンド。その上、 芝居小屋はいろいろな大道具・小道具や舞台装置がある。こういったその場の状況をうまく利用するのが、仕事人達の本領。秀はワイヤー・アクションするは、主水は奈落に潜むは、りくは津軽じょんがら節を弾くはで、もうやりたい放題。
結局「六文銭」は壊滅し、首領の庄兵衛も替え玉を使って逃げようとするところを、主水に刺され、りくが止めを刺した。

死闘から数日後、芝居小屋では朝之助の公演が行われていた。 「大した『芸』だね」と感嘆するりく。その傍にいた勇次が指差す先には、離れた客席の妻と 姑に弁当をいそいそと運ぶ主水の姿があった。りくのコメントは「あの人こそ千両役者だよ」というものであった。(完)




引き続いてキャストの紹介をしようと思うわけだが、今回はちょっと趣向を変 えて「存在感ランキング」でいく。

《女優編》
1位 鮎川いずみ
*役柄*仕事人何でも屋のお加世
*映画中の行動*基本的には情報員であり戦闘員ではないのだが、最後の決戦 には参加。悲鳴をあげて逃げまどいながら、結構エゲツなく敵を殺しまくる。
*一言*鮎川さんは当時30代前半。全般的に艶っぽくて、時にはコミカル、そ して時には凄みを見せる。人生経験の深みがある厚いキャラクターが、実に見事。それにしても、 いやー、いい女だなあ。

2位 山田五十鈴
*役柄*仕事人三味線屋のおりく
*映画中の行動*仕事人の重鎮としてドッシリ。
*一言*かなり高齢だと思うのだがキビキビした台詞回しと体の動きには、緩みがいささかもない。アクション女優している。

3位 浜田朱里
*役柄*仕事人に猫の敵討ちを依頼する遊女、お君。
*映画中の行動*最初恋人の敵討ちと偽って仕事を依頼するが、事実が判明して仕事人は撤退。猫の通夜をしている最中、「六文銭」に殺される。
*一言*個人的には浜田朱里はアブナそうで嫌いなのだが、この映画ではそのアブナさが見事に開花。芝居が巧いというより「素」の部分でのヤバさが、爆発 している。

4位 研ナオコ
*役柄*仕事人政の妻、およね
*映画中の行動*政のパートナーで夫に一生懸命尽くすが、最後は「六文銭」の手にかかる
*一言*想像されがちなコミカルさはほとんどなくて、きわめて真面目なキャラクター。仕事人の一味でありながら、夫を気遣い、幸せな家庭を夢見るフツーさ が、フツーでない人々の中で光っていた。

5位 菅井きん
*役柄*中村家の姑、せん
*映画中の行動*婿が「殺し屋」と聞いてあせったりするが、基本的にはTVドラマ通 り、いびりやさん。
*一言*達者な芝居。

6位 白木万理
*役柄*主水の妻、りつ
*映画中の行動*ノー天気で平凡な主婦。
*一言*主水に真っ昼間から誘われて、嬉しそうに準備を始める様子が、かわいい。こういうとこTV版じゃ一度もなかったね。

7位 朝丘雪路
*役柄*仕事人の芸者、お甲
*映画中の行動*「六文銭」を恐れて家にひきこもっていたが、祭りの日に黒い神輿が家に突っ込んできて、惨殺された。
*一言*死体の役で六文銭をくわえていたとき、何を考えていたのだろう。

8位 中井貴恵
*役柄*謎の女
*映画中の行動*「六文銭」の一味として登場するが、主水に惚れ、最後はどち らにも着かず、姿を消す。
*一言*「魔性の女」役は全く板についていない。ノーブルすぎて色気が足りないんじゃないか?

《男優編》
1位 片岡孝夫
*役柄*上方の人形浄瑠璃の人形使い、朝之助。
*映画中の行動*博打が好きで、仕事人もやっている。たまたま公演で江戸に来ているだけなので、江戸の仕事人業界かどうなろうが知ったこっちゃない、のだが、最後は気紛れで主水達に協力。
*一言*先年、仁左衛門を襲名した、歌舞伎俳優。スッゲーいい男だし、所為仕草がいちいち美しい。格好よさがレギュラーをも凌ぐ。

2位 石堂淑朗
*役柄*「六文銭」の首領、庄兵衛。
*映画中の行動*替え玉をたてるのが技。
*一言*「それって誰?」と思う人も多いだろうが、本職は脚本家。TV版「必殺仕事人」のメインライターだった人。映画学校の校長をやったりもしているが、い かにも校長先生らしい押し出しのよさが、「怪物」庄兵衛役にはまっている。

3位 藤田まこと
*役柄*八丁堀の同心、中村主水。仕事人。
*映画中の行動*主人公なので、それなりに活躍。多勢相手の立ち回りが見られるのは、この映画ならでは。TVドラマじゃありえなかった。普段の刀は竹光で、戦闘に備えて真剣にとりかえると き、顔つきも「表」から「裏」の顔に変わる。
*一言*やっぱり見せます。強力なゲストに対抗できていた数少ないレギュラー。

4位 芦屋雁之助
*役柄*屋根葺き職人・政。仕事人。
*映画中の行動*瓦を手裏剣みたいに投げるのが手口。瓦は重たいのであらかじめ戦闘場所を予想してそこに運んでおく必要があるというのが、ちょっとオマヌケ。妻がよく手伝ってくれて夫婦円満ぶりが微笑ましかったが、妻と一緒に死ぬ。関西弁。
*一言*しっかりアクションしている。ハッピーな夫婦が無残に死んでいく展開の中、いささかもゆるがない夫婦愛が印象に残った。

5位 中条きよし
*役柄*仕事人、三味線屋勇次
*映画中の行動*屋外戦では武器の「糸」がうまく使えず困った。
*一言*付け睫をつけた人形顔。このナルシストぶりが、このシリーズでの 魅力。

6位 柳澤慎吾
*役柄* 役名なし 、一般人
*映画中の行動*ただの酔っ払い。仕事人の時次郎を喧嘩で殺した。
*一言*意外なところに意外な人が出ていた。

7位 三田村邦彦
*役柄*仕事人、 飾り職人の秀
*映画中の行動*やたらと屋根に上がりたがる。
*一言*レギュラーとしては目立てず。あやうくたこ八郎に抜かれそう。髪形が現代風なので、メークが楽?オープニングの主題歌を歌っている。(エンディン グの主題歌は鮎川いずみ。)

8位以下は順不動
(最終決戦に参加しなかった仕事人達) ひかる一平(順之助)、赤塚不二夫(霞の半吉)、たこ八郎(キツツキの五平)、草野大悟(時次郎)、斉藤清六(石亀)、美里英二
(一般人) 山内敏男、火野正平
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