題名 :『一本刀土俵入』

登録日時 :02/06/23 04:26

1957年 東宝 脚本:井手正人 監督:マキノ雅弘 モノクロ 83分 原作はもちろん新国劇の長谷川伸。

物語はいたってシンプル。

取手(とって)の宿で、親方に見放された若い力士、茂兵衛(加東大介) は、勺取女(今で言うホステス)のお蔦(越路吹雪)に、世話になる。 10年後、夢破れヤクザになった茂兵衛が、取手に寄ってみると、消息不明に なっていたお蔦の夫(田中春男)が、イカサマ博打でヤクザに追われ、お蔦 の元に逃げてきていた。茂兵衛は恩返しに追っ手のヤクザ達の相手を一人で 引き受け、お蔦達を逃がす。相手ヤクザの親分は、草相撲の元横綱で、相撲 の勝負を挑んで来たが、茂兵衛はこれを破って、勝利のシコを踏む。(終)

廃業力士が大活躍する映画というと、『地獄の警備員』しか思い浮かばない私にとっては、よくわからない映画です。

昭和のディーバ、越路吹雪は時代劇には意外な配役ですが、これは大成功で彼女がアップで映るシーンは、まるで古いフランス映画みたいです。歌も歌っていますが、もちろんシャンソンではなく、日本の小唄です。最初伴奏は三味線でしたが、途中からオーケストラが被さってくると、何だかミュージカル映画のようでした。声も後年のようなしゃがれ声ではなく、細 く澄んだ声で、失礼ながら吹き替えかと思ってしまいました。

10年経つと、人間、いろいろ変わるものだ、というのがひとつの見せ所。若い力士はヤクザになり、チンピラヤクザだった田崎潤はいっぱしの親分にな り、水商売をしていたお蔦はカタギになりました。特に田崎潤の変貌ぶりは 上手い芝居・演出だと思います。

問題は加東大介ですね。いかにもトロそうな、「裸の大将」みたいな若い力士が、10年経って渡世人になり、立て板に水のごとき歯切れのいいマシン ガン・トークと、キリリといなせな合羽に三度笠。 この変身した加東大介を見て、カッコイイ、と思うかどうかが評価の分かれ 目でしょう。私の場合、全然ダメ。あの顔、あの胴回り、あの脚。どう見たって超ブオトコでしょ?それが妙に二枚目の芝居をするものだから、「こ の人、何か勘違いしてるんじゃないの?」という違和感がありまくり。クラ イマックスの立ち回り(といっても相撲ですが)にも、全くノレませんでした。

そういうわけで、私にとっては、モノクロ画面の美しい越路吹雪を堪能する だけの映画、でした。

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