題名 :「御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判」

登録日時 :00/03/26 22:47


74年、勝プロ製作、東宝配給の、まあはっきり言ってB級時代劇アクションです。当時は時代劇、現代劇問わず、「お色気」&「コミカル」な要素を取り入れたアクション映画が流行っておりまして、この映画もそうしたうちの一本なのでしょうが、さすが勝新は一味違う!もともとの原作は、小池一夫のアウトロー同心を主人公にした劇画ですが、かなりトンデモない。

まず私の目を引いたのは宣伝ポスターのキャッチコピー!
「剥き身の槍で悪を突き
 生身の槍で女責め」

生身の槍?
とっても凄そうだ、と期待が高まるのでした。



物語は、二人の人相の悪い男(蟹江敬三、草野大吾)が、お堀端で夜釣りをするシーンから始まります。「デッカイ鯉を釣って、精をつけて、吉原へ繰り出そう」みたいなあぶない都都逸を唄いながら二人が竿を出していると、女の幽霊が現れます。悲鳴を上げて逃げ出す二人。一人は立ちションの最中だったので、道に長ーくフンドシを引きずるのでした。

二人が逃げた先は、北町奉行所隠密廻り同心・板見半蔵(勝新太郎)の住居。二人は半蔵の部下だったのでした。おりしも半蔵は「鍛錬」のまっ最中。何の「鍛錬」か、お分かりですね?木製の台の上に「生身の槍」を載せ、太い棒で何度も打っています。ゴッ、ゴッと音がします。半蔵はゴッ、ゴッと鍛錬を続けながら、さわやかな笑顔で二人の話を聞き、「鍛錬が終わったら、その場所へ案内しろ」と言います。「一度幽霊とヤッてみたかったんだ。」と言いながら次の鍛錬メニューへ。米俵をですね、「生身の槍」で突くわけです。半蔵が気合を込めて腰を動かすたび、ズサッ、ズサっと音がして、とうとう俵が破れて米がこぼれ始めるのでした。

二人が案内した場所で、半蔵は竿を出しながら小唄を唄います。この小唄がメチャウマ。勝進って小唄の家元かなんかでしたっけ?すると予定通り現れた女幽霊。半蔵が幽霊を捕らえようとすると、お堀に飛び込んで逃げようとする幽霊。それを追って半蔵もお堀に飛び込み、女を捕まえ、お堀の底に突き刺さった不審な数本の竹筒を発見します。女の股座を覗いて「幽霊にしちゃあ、りっぱなモン、持ってるじゃねえか」とコメントする半蔵。(下品!)

半蔵の住処兼取り調べ番所に戻った一行。竹筒の中には吹きたての小判がギッシリ。これは幕府の御金蔵の小判を、何者かが持ち出そうとしたに違いない、その回収を妨げられないよう、女を幽霊にしたてて人を近づけないように図ったのだと見破った半蔵。そこで女を取り調べます。(ここでオープニングタイトル開始。)

もちろん、期待通り、例の「鍛錬」の成果を存分にいかした取り調べです。はじめは抵抗していた女も、あまりの気持ち良さに、どんどん自供を始めます。犯人は自分の亭主一味であること、自分の亭主は御金蔵の見張り役人であること...。

しかし、女の亭主(戸浦六宏)とその一味が、一同の跡をつけて襲撃を狙っていたのでした。突然グッタリする女。取調べ中の半蔵がここで言う台詞に、私は笑いました。
「おかしいな。妙に具合がいいぞ...。」
勝進ネクロに目覚める!

一気に押し入る盗賊一味。しかし、この家には忍者屋敷のようなからくりをあちこちに仕込んでました。落とし穴とかチープなからくりですが、バトル・フィールドとして圧倒的に半蔵が有利。たちまち盗賊一味は壊滅。最後に生き残った御金蔵役人から半蔵は黒幕の名を聞き出そうとするのですが、突然現れた武士が役人を斬って姿を消します。半蔵はその男の刀の鞘が赤いことを見覚えるのみ。

「黒幕」の正体は当代随一の琴の名人(盲目)にして、老中堀田の加護を受ける、石山検校(小池朝夫)。彼は盲人コミュニティのトップに立つ者でもありました。彼の命令により、盲人たちが借金の取りたてをしたり、有閑マダムの性欲処理したり。(このあたりは「座頭市」の一種のパロディになってます。権力と無縁なアウトローである市のカッコ良さと、権力を持ってそれに溺れてしまった検校の醜さが対比されていると思います。)

老中の奥方(緑魔子)の寝所に忍び込んだ半蔵。すでに乱交パーティの現場に踏み込まれていて、彼女は半蔵を拒むことができない。おりしも、検校が呼ばれて琴を奏でている最中でした。ここで「生身の槍」大活躍!思わず彼女が漏らす「ああ、たまらないわあ...」という吐息を、自分の琴への礼賛と勘違いした検校は、ここぞとばかりにハッスルし、超絶技巧を駆使して琴をかき鳴らす!(ここ、可笑しかったなあ。)

そこに帰ってきた老中堀田と検校の会話を奥方の蒲団に潜んで聞いた半蔵は、全てを理解。半蔵の旧友武井兵介を殺して、名槍「青江長門の槍」を奪った検校が、その槍を武器フェチの堀田に貢上して御金蔵の金を横流ししてもらい、貧乏武士に貸し出して大もうけする算段なのでした。

検校と堀田をとっちめて悪巧みを阻止した後、奪い返した名槍を旧友の墓前にささげる半蔵。そこに襲いかかるのは、検校の用心棒だった赤鞘の武士・戸波万作(成田三樹夫)!得意の武器・鎖十手で応戦するも、武器を弾き飛ばされて絶体絶命の窮地に陥った半蔵は、名槍を手にとって返り討ち。友の槍で友の敵を討ったのでした。(終)



基本的におバカな映画だとは、思います。現代の目で見たら「女性蔑視」だの「障害者差別」だのという批判は免れないと思います。立派な「槍」を持っている、というだけで、あらゆる女が言いなりになるというのは、あまりに貧しい女性観。哀しい男の幻想であり、屈折したユートピアでしょう。

けれども、幻想やユートピアもまた映画という表現の本質の一部ではあります。この映画は、全体としてとてもカラッとしてます。哀しさや屈折とは無縁。勝進のサービス精神あふれる演技に、私は多いに満足したのでした。

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