題名 :『御用牙』

登録日時 :01/04/02 00:50


シリーズ第一作。72年勝プロ製作、東宝配給。

以前にシリーズ3作目の『鬼の半蔵やわ肌小判』について書いたことがあるのだが、こちらは第一作。監督が違うせいもあって、三作目に較べると、テイストが一味違う。まず、こちらには「巨大な悪の陰謀」など、存在しない。「同心モノ」でありながら、世間が騒ぐような大きな事件も起きない。あくまで世に知れぬ裏側で、密やかに紡がれる闇の物語に、勝進演じる同心が首を突っ込んでいく。(ついでに首以外の部分も突っ込むのだが...)

演出はどこか乾いた、ハードボイルドなタッチ。勝進が得意の「ニヤケ顔」をあまり見せず、真顔のシーンが多いのも、意図的な演出だと思う。コテコテ、たっぷり、トゥーマッチだった三作目とは、明らかに異なる、シャープで緩みのない映画に仕上がっている。さすがは三隅研次監督だ。B級といえども、明確な意図をもった映画作りに手抜きはない。シナリオは原作者の小池一夫が手がけているが、ストーリー的には今回はかなりシンプルである。



隠密廻り同心板見半蔵(勝新太郎)は、島流しになっているはずの殺し屋、三途の勘兵衛(田村高広)を江戸市中で見かけたという情報を得る。パイパンの女とアオカンしていたという。さらに半蔵と反りが合わない上司、筆頭与力の大西孫兵衛(西村晃)の弱みを握るため、大西を部下に張らせていた半蔵は、大西がお美乃 (朝丘雪路)というパイパンの女を囲っていることを知る。

そこで半蔵はお美乃を拉致して、取り調べる。といっても要するにレイプするわけだが、あまりの気持ち良さにお美乃は全てを告白。お美乃は勘兵衛の愛人なのだが、何者かが勘兵衛を助けるために、お美乃の体と金子50両を大西に与えて買収したのだという。大西は勘兵衛の身代わりをしたてて島に送り、本物の勘兵衛を逃がしたのだった。

半蔵の仕掛けた罠にかかり勘兵衛が出てくる。橋の上で切り結ぶ両者。勘兵衛の連続攻撃に圧倒されじりじりとあとずさる半蔵だったが、勘兵衛が攻撃を止めた一瞬の隙をついて、逆襲し倒す。こうして半蔵は大西の弱みを握った。

さて大西を買収し、勘兵衛を助けた者は何者か?半蔵が目をつけたのは、大奥。大奥勤めをしたことのある友人(山内明)の話によると、大奥の最高権力者、お市の方が可愛がっている医者の娘の護衛を勘兵衛がしていたらしい。

半蔵はまたも、その医者の娘おゆら(渥美マリ)を拉致し、取り調べる。といってもやはりレイプするだけだったが、またもおゆらは気持ち良さに絶え切れず、全てを白状する。お市の方は浮気相手の役者への恋文を、おゆらの体に白粉彫りで刺青し、届けさせていたのだった。こうして半蔵は大奥最高権力者の弱みまで握ってしまった。これにて一件落着。

終盤にエピローグ的な逸話がある。
半蔵が屋台で蕎麦を食っていると、幼い姉弟が屋台にやってきて、姉の方がお酒を頼んで一気飲みし、引き返して行く。不審に思った半蔵が姉弟の後をつけると、長屋に帰った姉弟は病気に苦しむ父親を安楽死させようとしていた。半蔵は姉弟を外に出したあと、父親を死なせる。(このとき臥せっていた病人の体が立ちあがり、ぶら下がる様子があまりに鮮やかので、観客が「おお!」と感嘆した。)そして「病を苦にした自殺」ということにしてしまう。(完)



配役で注目は、石橋蓮司、草野大悟、蟹江敬三のトリオ。半蔵の手下役を悪者顔で、のびのびとコミカルに好演している。

朝丘雪路は化粧がニューハーフみたいで、少し怖い。渥美マリは顔は色っぽいのだが、体にドテっとしたアーシーなたくましさがあり、やはり少し怖い。ふたりとも華奢とか弱々しさとは無縁で、レイプシーンでも全く可愛そうに思えないので、キャストに納得はいく。取り調べのシーンで二人が感じ始めると、お約束のようにムーディなBGMが流れ始めるのが、とても可笑しかった。

音楽といえば、エンディングの主題歌はなんとザ・モッズが演奏している。パンクロックである。「かみそりハンゾー、どこへ行くー」などと搾り出すようなシャウトをしていて、映像も突然サイケ調になり、時代劇なのに1970年代が鮮やかに蘇ってしまった。 寺山修司がちょっと入ってるかな?

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